真理の探求(1)二人の思想家
釈尊は真理の追求を始めるに当つて、先ず最初に選んだ思想家は、ヴァイシャーリー市の近くに300人の弟子と一緒に住んでいたアーラーラ・カーラーマという思想家であつた。彼は伝統的なバラモンの教えを信ずる思想家ではなく、独自の新しい思想を説いていた思想家と考えられ、その主張は無所有処と呼ばれている。それは所有を持たないという考え方であるから、われわれ人間が普通に持つて居る所有という考え方を否定し、われわれが本来、無所有であるということを強調した考え方であつたと思われる。しかし釈尊はアーラーラ・カーラーマの思想が、単なる思想であつて実践の立場に踏み込んでいないことに気が付き、その教えを離れたものと解される。そこで釈尊は他の思想家であるウツダカ・ラーマプツタを訪れた。しかしその土地はアーラーラ・カーラーマの住んでいた場所とあまり離れていなかつたと云われているけれども、現在の何処に当るかは,諸説があつて未だに確定していない。ウツダカ・ラーマプツタの名前は、ラーマの子・ウツダカの意味であり,彼は700人の弟子と一緒に住んでいたと云われている。彼の主張は非想非非想処という言葉で表現されているから、思想でもないし、思想の反対の感覚的な刺激でもないという意味であつて、現実を目標としていると解される。しかし釈尊は、問題が単に思想の段階だけに留まり,現実の行為の段階に踏み込んでいない処から、ウツダカ・ラーマプツタの思想にも満足することが出来ず、やがて別の世界に解決を求める結果になつたと思われる。
(注)「釈尊の人柄」および「真理の探究」に関連しては、主として春秋社刊行の中村元選集(11)ゴータマ・ブツダ及び岩波書店刊の岩波仏教辞典に依つた。
(注)「釈尊の人柄」および「真理の探究」に関連しては、主として春秋社刊行の中村元選集(11)ゴータマ・ブツダ及び岩波書店刊の岩波仏教辞典に依つた。
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