2005年12月1日木曜日

「さとり」とは何か

「さとり」とは、われわれが、心の世界でもなく、物の世界でもなく、現実の世界の中に生きているという事実を、単に頭の中だけではなしに、体全体を通じて実観することである。
そんなことは誰でも何時も実感していると、人々は云うかもしれない。しかし人々の中には、俺は心の世界の中に生きている考えている人も沢山いるし、俺は物の世界の中に生きている感じている人も沢山いる。何故そのようなことが起こるのかということを考えて見ると、このことは20世紀になつて、近代的な心理学と生理学とが發達するまでは分からなかつた。しかし幸いにして人類の優れた文化の發達により、はつきりして来た。それは人間の体の中に、したがつて人間の心の中に、自律神経と呼ばれる神経組織のあるということが、はつきりして来たことと関係している。
われわれのわれわれの体の中には自律神経と呼ばれる神経組織があつて、それが更に交感神経と副交感神経とに分かれている。そして交感神経の方が、人間のものを考える働きと密切に関連しており,副交感神経の方が人間の物を感ずる働きと密切に関連している。したがつて偶々交感神経の強い人は、物事を考える機会が多い所から、自分は心の世界に生きていると考え勝ちであるし、副交感神経の強い人は,外界の世界に対して敏感である処から、自分は物の世界の中に生きていると感じ易い。
なんだそんなくだらないことは、どつちでも良いではないかという人も多いかもしれないが、実はこの自律神経の在り方が、人間が観念論者で有るか,唯物論者であるかを決める。